Pentium 4(Willametteコア)
Pentium 4 は Intel が Pentium III の後継として2000年(平成12年)11月に発売したCPUである。設計思想を大きく転換し、動作クロックの向上を最優先する NetBurstアーキテクチャ を採用した。初代の開発コード名は Willametteコア で、その後 Northwoodコア、Prescottコア、Cedar Millコア へと世代を重ねた。
目次
Pentium IIIとの違い
Pentium 4 ダイ写真(Willametteコア)
Pentium III は P6マイクロアーキテクチャ の集大成で、パイプラインは12段、動作クロックは1.0~1.4GHzにとどまっていた。Pentium 4 は内部構造を一新し、パイプラインを20段(Prescottコアでは31段)まで深くすることで、最終的に3.8GHzへと大幅な高速化を果たした。
一方、1クロックあたりの処理効率(IPC)は Pentium III より低下しており、同クロックで比べた実効性能では見劣りする場面もあった。それでも高クロック化によって総合性能で上回ることを狙った設計である。
動作クロック最優先のNetBurst設計
NetBurstアーキテクチャ
Pentium 4 開発当時、トランジスタ数を増やして処理効率(IPC)を高めても、性能はその平方根程度にしか伸びないという「ポラックの法則」が知られていた。そこでインテルは、命令解釈(フロントエンド)と実行(バックエンド)を分離し、パイプラインを深くして動作クロックを最優先で引き上げる NetBurstアーキテクチャ を採用した。

パイプラインを深くするほど各ステージの処理は単純になり、同期用のラッチを高速に動かして動作クロックを上げやすくなる。半面、分岐予測を外すとパイプライン内の命令をすべて破棄してやり直すことになり、そのペナルティは段数に比例して大きくなる。NetBurstアーキテクチャ は、分岐予測の精度と大容量の2次キャッシュでこの弱点を補おうとした設計である。
パイプラインを深くするほど各ステージの処理は単純になり、同期用のラッチを高速に動かして動作クロックを上げやすくなる。半面、分岐予測を外すとパイプライン内の命令をすべて破棄してやり直すことになり、そのペナルティは段数に比例して大きくなる。NetBurstアーキテクチャ は、分岐予測の精度と大容量の2次キャッシュでこの弱点を補おうとした設計である。
Hyper-Threadingテクノロジ
デュアルコアとHyper-Threading
2002年(平成14年)11月、Northwoodコア 版 Pentium 4 に Hyper-Threading(HT)テクノロジが搭載された。1つの物理コアに2つの論理プロセッサがあるように見せかけ、OSやアプリケーションから2つのCPUが動いているかのように処理を並行させる技術で、複数タスクや対応ソフトの性能を底上げした。

Hyper-Threading は実行ユニットの空き時間を有効活用する仕組みであり、物理的に2コア分の性能が出るわけではない。しかし当時はまだマルチコアCPUが登場しておらず、1つのダイでマルチスレッド処理の恩恵を得られる先進技術として注目された。
Hyper-Threading は実行ユニットの空き時間を有効活用する仕組みであり、物理的に2コア分の性能が出るわけではない。しかし当時はまだマルチコアCPUが登場しておらず、1つのダイでマルチスレッド処理の恩恵を得られる先進技術として注目された。
SSE2・SSE3命令
Pentium 4 は登場時から SSE2 命令を搭載し、Pentium III の SSE を拡張して倍精度浮動小数点演算やより多くの整数演算に対応させ、動画・音声処理などマルチメディア性能を高めた。2004年(平成16年)の Prescottコア では、さらに13命令を追加した SSE3 にも対応した。

SSE2・SSE3 の追加により、MMX Pentium 世代からの浮動小数点・整数のSIMD処理能力が大きく向上し、画像編集、動画エンコード、3Dゲームなどの用途で性能向上を実感できるようになった。
SSE2・SSE3 の追加により、MMX Pentium 世代からの浮動小数点・整数のSIMD処理能力が大きく向上し、画像編集、動画エンコード、3Dゲームなどの用途で性能向上を実感できるようになった。
高発熱・高消費電力
Pentium 4 ダイ写真(Prescottコア)
NetBurstアーキテクチャ はパイプラインの段数を増やすほど同期用のラッチが増え、動作クロックを上げるほど消費電力と発熱が急増するという弱点を抱えていた。特に2004年(平成16年)の Prescottコア は想定外のリーク電流に悩まされ、TDPが100Wを超える製品も現れた。
高発熱化により大型のヒートシンクや静音性の高い冷却ファンが必須となり、自作PC市場では「Pentium 4 は熱い」という評判が広まった。動作クロックを上げれば性能が伸びるという NetBurstアーキテクチャ の前提は、この発熱の壁によって崩れることになる。
ソケットとメモリ規格の変遷
Pentium 4 は8年足らずのあいだにソケット規格が3度も変わった。2000年(平成12年)11月の初代 Willametteコア は423ピンの Socket 423、2001年(平成13年)8月には478ピンの Socket 478 が登場し、2002年(平成14年)1月の Northwoodコア 以降はこちらが主流となった。さらに2004年(平成16年)6月には、ピンをマザーボード側に移した LGA775 へ移行した。

対応メモリも RDRAM から DDR SDRAM、さらに DDR2 SDRAM へと目まぐるしく変遷し、パソコンを買い替えるたびにマザーボードとメモリを含めた総入れ替えが必要になるなど、ユーザーにとって負担の大きい世代となった。
対応メモリも RDRAM から DDR SDRAM、さらに DDR2 SDRAM へと目まぐるしく変遷し、パソコンを買い替えるたびにマザーボードとメモリを含めた総入れ替えが必要になるなど、ユーザーにとって負担の大きい世代となった。
RDRAMとの関係
RDRAMモジュール
初代 Pentium 4 は、Rambus社が開発した高速メモリ RDRAM を採用するi850チップセットとセットで投入された。帯域幅は高かったが、製造コストとライセンス料が高額で、当時主流だった SDRAM や DDR SDRAM に比べて非常に高価だった。

価格面の不評から普及が進まず、インテルは2001年(平成13年)、安価な SDRAM・DDR SDRAM に対応する i845チップセット を投入し、事実上 RDRAM 路線を撤回した。この一件は、性能だけでなくコストとエコシステムの重要性を示す事例として語られている。
価格面の不評から普及が進まず、インテルは2001年(平成13年)、安価な SDRAM・DDR SDRAM に対応する i845チップセット を投入し、事実上 RDRAM 路線を撤回した。この一件は、性能だけでなくコストとエコシステムの重要性を示す事例として語られている。
Pentium 4の終焉
Pentium D ダイ写真
インテルが Prescottコア の後継として6GHz超えを目標に開発していた「Tejas」は、発熱と消費電力の問題を解決できず、2004年(平成16年)5月に開発中止となった。NetBurstアーキテクチャ による高クロック路線は、ここで限界を迎える。2005年(平成17年)5月には Prescottコア を2つ搭載したデュアルコア版「Pentium D」を投入したが、AMDの Athlon 64 X2 に対して劣勢を強いられた。
シングルコアの Pentium 4 は、2006年(平成18年)に65nmプロセスの Cedar Millコア を出したところで打ち止めとなる。インテルは2007年(平成19年)12月7日に新規受注を打ち切り、2008年(平成20年)8月8日に最終出荷を終えた。以後の主力は、低消費電力と高いIPCを両立する P6マイクロアーキテクチャ 系の Pentium M、Core Duo、Core 2 Duo へと引き継がれ、さらに Core i シリーズへとつながっていった。
主要スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| メーカー | Intel |
| 生産時期 | 2000年11月~2008年8月 |
| 開発コード名 | Willamette/Northwood/Prescott/Cedar Mill |
| トランジスタ数 | 4200万~1億8800万 |
| データ長 | 32ビット(Prescott以降は64ビット拡張EM64Tにも対応) |
| CPUクロック | 1.3GHz~3.8GHz |
| プロセスルール | 180nm~65nm |
| マイクロアーキテクチャ | NetBurst |
| ソケット | Socket 423, Socket 478, LGA775 |
| 対応メモリ | RDRAM, SDRAM, DDR SDRAM, DDR2 SDRAM |
| TDP | 約55W~115W |
CPUの歴史
| 発表年 | メーカー | CPU名 | ビット数 | 最大クロック |
|---|---|---|---|---|
| 1970年 | Garrett AiResearch | MP944 (軍用) | 20bit | 375KHz |
| 1971年 | インテル | 4004 | 4bit | 750KHz |
| 1974年 | インテル | 8080 | 8bit | 3.125MHz |
| 1975年 | モステクノロジー | MOS 6502 | 8bit | 3MHz |
| 1976年 | ザイログ | Z80 | 8bit | 20MHz |
| 1978年 | インテル | 8086 | 16bit | 10MHz |
| 1979年 | モトローラ | MC6809 | 8bit | 2MHz |
| 1979年 | ザイログ | Z8000 | 16bit | 10MHz |
| 1980年 | モトローラ | MC68000 | 16bit | 20MHz |
| 1983年 | NEC | V30 | 16bit | 16MHz |
| 1984年 | インテル | 80286 | 16bit | 12MHz |
| 1985年 | インテル | 80386 | 32bit | 40MHz |
| 1985年 | インテル | i960 | 32bit | 100MHz |
| 1985年 | サン・マイクロシステムズ | SPARC | 32bit | 150MHz |
| 1986年 | MIPS | R2000 | 32bit | 15MHz |
| 1987年 | ザイログ | Z280 | 16bit | 12MHz |
| 1987年 | モトローラ | MC68030 | 32bit | 50MHz |
| 1988年 | MIPS | R3000 | 32bit | 40MHz |
| 1989年 | インテル | 80486 | 32bit | 100MHz |
| 1989年 | インテル | i860 | 32bit | 50MHz |
| 1991年 | MIPS | R4000 | 64bit | 200MHz |
| 1990年 | モトローラ | MC68040 | 32bit | 40MHz |
| 1993年 | インテル | Pentium | 32bit | 300MHz |
| 1994年 | IBM, モトローラ | PowerPC 603 | 32bit | 300MHz |
| 1995年 | サイリックス | Cyrix Cx5x86 | 32bit | 133MHz |
| 1995年 | AMD | Am5x86 | 32bit | 160MHz |
| 1995年 | サン・マイクロシステムズ | UltraSPARC | 64bit | 200MHz |
| 1999年 | IBM, モトローラ | PowerPC G4 | 32bit | 1.67GHz |
| 1999年 | AMD | Athlon | 32bit | 2.33GHz |
| 2000年 | インテル | Pentium 4 | 32bit | 3.8GHz |
| 2001年 | インテル | Itanium | 64bit | 800MHz |
| 2003年 | AMD | Opteron | 64bit | 3.5GHz |
| 2003年 | インテル | Pentium M | 32bit | 2.26GHz |
| 2006年 | SCE,ソニー,IBM,東芝 | Cell | 64bit | 3.2GHz |
| 2006年 | インテル | Core Duo | 32bit | 2.33GHz |
| 2006年 | インテル | Core 2 Duo | 64bit | 3.33GHz |
| 2008年 | インテル | Core i9/i7/i5/i3 | 64bit | 5.8GHz |
| 2017年 | AMD | Ryzen | 64bit | 5.7GHz |
| 2020年 | Apple | M1/M2/M3/M4/M5 | 64bit | 3.49GHz |
| 2023年 | インテル | Core Ultra 9 / 7 / 5 | 64bit | 5.1GHz |
参考サイト
(この項おわり)
大きな写真