Zilog Z8000
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目次
Z8000の開発
Z8000のダイ写真
Z80 の大ヒットに続き、ザイログ は16ビットCPU「Z8000」の開発に着手した。アーキテクチャ設計をBernard Peuto が担当し、論理設計と物理設計は嶋正利 が数名のスタッフとともに行った。
Z8000シリーズは1979年(昭和54年)初めに登場し、Intel 8086(1978年4月)とMC68000(1979年9月)のちょうど中間にあたるタイミングでの発表となった。
Z8000シリーズは1979年(昭和54年)初めに登場し、Intel 8086(1978年4月)とMC68000(1979年9月)のちょうど中間にあたるタイミングでの発表となった。
Z80との対比
Z80 は8ビットのデータバスと64Kバイトのアドレス空間を持つCPUだった。これに対しZ8000は、16ビットのデータバスを備え、Z8001 ではセグメント方式により最大8Mバイトへとアドレス空間を大幅に拡張した。
Z80がインテル 8080 の上位互換として設計され、既存資産を活かして市場に浸透したのに対し、Z8000は新規設計のCPUとして、Z80とは別の市場(16ビット機・組み込み・UNIXサーバ)を切り拓こうとした点が対照的である。
Z80がインテル 8080 の上位互換として設計され、既存資産を活かして市場に浸透したのに対し、Z8000は新規設計のCPUとして、Z80とは別の市場(16ビット機・組み込み・UNIXサーバ)を切り拓こうとした点が対照的である。
レジスタ構成の柔軟さ
Z8000のレジスタ構成
Z8000 のレジスタセットは、R0からR15までの16本の16ビット汎用レジスタからなる。これらは命令によって8・16・32・64ビットのレジスタとして柔軟に扱うことができ、32ビットとしては8個(RR0, RR2, RR4, RR6, RR8, RR10, RR12, RR14)、64ビットとしては4個(RQ0, RQ4, RQ8, RQ12)が利用できた。
レジスタは完全に汎用で直交性が高いが、R15はスタックポインタ、R14はスタックセグメントとして予約的に使われた。R8~R15はインデックスレジスタとしても使え、セグメントレジスタ+ポインタの意味を兼ねた。
レジスタは完全に汎用で直交性が高いが、R15はスタックポインタ、R14はスタックセグメントとして予約的に使われた。R8~R15はインデックスレジスタとしても使え、セグメントレジスタ+ポインタの意味を兼ねた。
Z8001とZ8002の違い
Z8001とZ8002
Z8001 は48ピンのパッケージで、7ビットのセグメント方式 レジスタを備え、64Kバイトのセグメントを最大128個、合計8Mバイトの論理アドレス空間を扱えた。コンピュータ本体向けの上位モデルである。
一方のZ8002 は40ピンで、セグメント機構を持たず、アドレス空間は64Kバイトに限られる。回路が単純で低コストなことから、組み込みシステムやゲーム基板向けに使われた。のちにCMOS版として、それぞれZ16C01・Z16C02 も発売された。
一方のZ8002 は40ピンで、セグメント機構を持たず、アドレス空間は64Kバイトに限られる。回路が単純で低コストなことから、組み込みシステムやゲーム基板向けに使われた。のちにCMOS版として、それぞれZ16C01・Z16C02 も発売された。
Z80との互換性
Z8000はZ80 とバイナリレベルの互換性を持たず、命令セットも一新された。ただし、2本のレジスタを組み合わせて2倍幅のレジスタとして扱う考え方は、Z80の裏レジスタ構成などから着想を得ているとされる。
また、アセンブラレベルでの親しみやすさを保つため、R0~R7の8本の汎用レジスタは8ビット単位でも使用できるようにされていた。CP/M-80資産を活かすため、Z80エミュレーションを行う拡張カード(Trump Cardなど)も登場し、既存ソフトの延命に使われた。
また、アセンブラレベルでの親しみやすさを保つため、R0~R7の8本の汎用レジスタは8ビット単位でも使用できるようにされていた。CP/M-80資産を活かすため、Z80エミュレーションを行う拡張カード(Trump Cardなど)も登場し、既存ソフトの延命に使われた。
MMUと特権モード
Z8010 MMU
Z8001 は、外付けのZ8010(MMU)と組み合わせることで、セグメント方式の論理アドレスを実アドレスに変換し、アドレス空間を8Mバイトまで拡張できた。ただし、この専用チップが当初の発売時点では間に合わず、コストと複雑さの増加を招いた。
CPUにはユーザモードとスーパバイザモードからなる特権モード が備わり、OSのカーネルとアプリケーションを分離できた。国内の中央電子は、Z8010のバグを回避するためMMUを2個搭載したUNIXマシン「CEC8000」を1981年(昭和56年)に発売している。
DRAMリフレッシュ回路の内蔵
Z80 同様、Z8000もDRAM のリフレッシュ回路をCPU内部に内蔵していた。これにより、当時SRAM より安価なDRAM を周辺回路を追加せずに主記憶として使うことができ、設計者にとって魅力的な特徴のひとつだった。
しかし、こうした先進的な設計を備えていたにもかかわらず、Z8000は全体として十分な速度が出ず、エラッタ も散見されるなど、実装面での完成度の低さが後々まで足を引っ張ることになった。
しかし、こうした先進的な設計を備えていたにもかかわらず、Z8000は全体として十分な速度が出ず、エラッタ も散見されるなど、実装面での完成度の低さが後々まで足を引っ張ることになった。
採用例
ポールポジション
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アーケードゲームでは、ナムコが1982年(昭和57年)に稼動を開始した「ポールポジション」が、セグメントを持たないZ8002 を2個搭載したことで知られる。
1980年代初めには、Z8000はグラフィック端末を備えたワークステーションというより、多数のシリアルポートでディスクやプリンタを共有する小規模サーバとして、デスクトップ型UNIXマシンによく使われた。
1980年代初めには、Z8000はグラフィック端末を備えたワークステーションというより、多数のシリアルポートでディスクやプリンタを共有する小規模サーバとして、デスクトップ型UNIXマシンによく使われた。
Onyx C8000
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1980年(昭和55年)1月公開の Onyx Systems 「C8000」は、シリアルポートを8個備えた初期のUNIXマルチユーザーシステムで、価格は25,000ドルだった。イタリアのOlivetti もM20・M30・M40・M50・M60シリーズにZ8000系を採用した。
ザイログ 自身も「System 8000」シリーズを発売し、Version 7 UNIX派生のOS「ZEUS」を搭載、RM CobolによってビジネスアプリケーションをすばやくZ8000へ移植できた。米AMDとシャープはセカンドソースとして製造を担った。
ザイログ 自身も「System 8000」シリーズを発売し、Version 7 UNIX派生のOS「ZEUS」を搭載、RM CobolによってビジネスアプリケーションをすばやくZ8000へ移植できた。米AMDとシャープはセカンドソースとして製造を担った。
なぜ主流になれなかったのか
MC68000 がセグメント方式を使わず最大16Mバイトのフラットなメモリ空間を実現したのに対し、Z8001 のセグメント方式は複雑で扱いにくく、しかもMMU「Z8010」の発売遅延により、当初18カ月間は実質64Kバイトの制約下での利用を強いられた。
また、インテルは8086 向けに豊富な周辺チップ群を揃えて設計者を囲い込んだ。

決定的だったのは1980年(昭和55年)、IBM がIBM PC のCPUに8088 を選んだことである。フェデリコ・ファジン は、ザイログ の親会社がエクソン だったことをIBMが警戒したためだと見ている。エクソンはIT分野でIBMの競合になる野心を持っていたからだ。
インテルが展開した「Crush作戦」と呼ばれる強力な販売キャンペーンも功を奏し、優れたアーキテクチャを持ちながら市場投入が遅れたZ8000は、x86ファミリの陰に埋もれていった。
また、インテルは8086 向けに豊富な周辺チップ群を揃えて設計者を囲い込んだ。
決定的だったのは1980年(昭和55年)、IBM がIBM PC のCPUに8088 を選んだことである。フェデリコ・ファジン は、ザイログ の親会社がエクソン だったことをIBMが警戒したためだと見ている。エクソンはIT分野でIBMの競合になる野心を持っていたからだ。
インテルが展開した「Crush作戦」と呼ばれる強力な販売キャンペーンも功を奏し、優れたアーキテクチャを持ちながら市場投入が遅れたZ8000は、x86ファミリの陰に埋もれていった。
後継・派生
Z8000の後継として、32ビット版のZ80000 が投入されたが、市場への影響は限定的だった。CMOS化されたZ16C00 シリーズも発売され、Z16C01・Z16C02がそれぞれZ8001・Z8002に相当する製品として供給が続けられた。
Z8000系は、軍事 規格MIL-STD-883 Class Bにも対応しており、TTLレベルで動作する堅牢さから、航空機など耐ノイズ性が求められる機器にも採用された。
Z8000系は、軍事 規格MIL-STD-883 Class Bにも対応しており、TTLレベルで動作する堅牢さから、航空機など耐ノイズ性が求められる機器にも採用された。
主要スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| メーカー | ザイログ |
| 発表 | 1979年 |
| データバス | 16ビット |
| アドレスバス | Z8001:セグメント方式(最大8MB) / Z8002:非セグメント(64KB) |
| レジスタ | 16ビット汎用レジスタ×16本(8/16/32/64ビットで柔軟に使用可) |
| MMU | Z8010(Z8001用、外付け) |
| 動作モード | ユーザモード/スーパバイザモード |
| パッケージ | Z8001:48ピンDIP / Z8002:40ピンDIP |
| 動作電圧 | 5V単一 |
CPUの歴史
| 発表年 | メーカー | CPU名 | ビット数 | 最大クロック |
|---|---|---|---|---|
| 1970年 | Garrett AiResearch | MP944 (軍用) | 20bit | 375KHz |
| 1971年 | インテル | 4004 | 4bit | 750KHz |
| 1974年 | インテル | 8080 | 8bit | 3.125MHz |
| 1975年 | モステクノロジー | MOS 6502 | 8bit | 3MHz |
| 1976年 | ザイログ | Z80 | 8bit | 20MHz |
| 1978年 | インテル | 8086 | 16bit | 10MHz |
| 1979年 | モトローラ | MC6809 | 8bit | 2MHz |
| 1979年 | ザイログ | Z8000 | 16bit | 10MHz |
| 1980年 | モトローラ | MC68000 | 16bit | 20MHz |
| 1983年 | NEC | V30 | 16bit | 16MHz |
| 1984年 | インテル | 80286 | 16bit | 12MHz |
| 1985年 | インテル | 80386 | 32bit | 40MHz |
| 1985年 | インテル | i960 | 32bit | 100MHz |
| 1985年 | サン・マイクロシステムズ | SPARC | 32bit | 150MHz |
| 1985年 | エイコーン | ARM1 | 32bit | 6MHz |
| 1986年 | MIPS | R2000 | 32bit | 15MHz |
| 1987年 | ザイログ | Z280 | 16bit | 12MHz |
| 1987年 | モトローラ | MC68030 | 32bit | 50MHz |
| 1988年 | MIPS | R3000 | 32bit | 40MHz |
| 1989年 | インテル | 80486 | 32bit | 100MHz |
| 1989年 | インテル | i860 | 32bit | 50MHz |
| 1990年 | モトローラ | MC68040 | 32bit | 40MHz |
| 1991年 | MIPS | R4000 | 64bit | 200MHz |
| 1992年 | DEC | Alpha 21064 | 64bit | 200MHz |
| 1993年 | IBM, モトローラ, Apple | PowerPC 601 | 32bit | 120MHz |
| 1993年 | インテル | Pentium | 32bit | 300MHz |
| 1994年 | IBM, モトローラ, Apple | PowerPC 603 | 32bit | 300MHz |
| 1995年 | サイリックス | Cyrix Cx5x86 | 32bit | 133MHz |
| 1995年 | AMD | Am5x86 | 32bit | 160MHz |
| 1995年 | サン・マイクロシステムズ | UltraSPARC | 64bit | 200MHz |
| 1999年 | IBM, モトローラ | PowerPC G4 | 32bit | 1.67GHz |
| 1999年 | AMD | Athlon | 32bit | 2.33GHz |
| 2000年 | インテル | Pentium 4 | 32bit | 3.8GHz |
| 2001年 | インテル | Itanium | 64bit | 800MHz |
| 2003年 | AMD | Opteron | 64bit | 3.5GHz |
| 2003年 | インテル | Pentium M | 32bit | 2.26GHz |
| 2006年 | SCE,ソニー,IBM,東芝 | Cell | 64bit | 3.2GHz |
| 2006年 | インテル | Core Duo | 32bit | 2.33GHz |
| 2006年 | インテル | Core 2 Duo | 64bit | 3.33GHz |
| 2008年 | インテル | Core i9/i7/i5/i3 | 64bit | 5.8GHz |
| 2017年 | AMD | Ryzen | 64bit | 5.7GHz |
| 2020年 | Apple | M1/M2/M3/M4/M5 | 64bit | 3.49GHz |
| 2023年 | インテル | Core Ultra 9 / 7 / 5 | 64bit | 5.1GHz |
参考サイト
- Z8000:Wikipedia
- Zilog Z8000:Wikipedia(英語版)
- Captain Zilog Crushed! The Story of the Z8000:The Chip Letter
- The Z8000 / Z80,000 / Z16C00 CPU homepage
- Z80 で機械語を学ぶ:ぱふぅ家のホームページ
- MC68000は32ビット時代を切り拓いたCPU:ぱふぅ家のホームページ
- 8086は x86アーキテクチャの元祖:ぱふぅ家のホームページ
(この項おわり)

セグメント方式で8Mバイトまで拡張できるZ8001 と、組み込み向けで64Kバイトに限られるZ8002 の2種類があり、Intel 8086(1978年)とMC68000(1979年)のちょうど中間の時期に登場した。