AMD Opteronは64ビット拡張「AMD64」でItaniumに勝利したサーバー向けCPU

2003年4月22日リリース
AMD Opteron K8
AMD Opteron K8
AMD Opteron(開発コード名SledgeHammerK8アーキテクチャ)は、AMDが2003年(平成15年)4月22日に発売したサーバー・ワークステーション向けx86互換CPUである。x86命令セットを64ビットに拡張した独自技術「AMD64」を世界で初めて採用した製品で、32ビットアプリケーションを速度低下なく実行できる点でIntelItaniumと一線を画した。

目次

Opteron誕生の経緯

AMD Opteron K8 ダイ写真
AMD Opteron K8 ダイ写真
その源流をたどれば、1999年(平成11年)発売のAthlon(K7)に始まるAMDは、2001年(平成13年)に32ビットのAthlon MPでサーバー市場に参入していたが、性能・拡張性の面で限界が見えていた。その後継として開発されたのがK8アーキテクチャ、開発コード名「SledgeHammer」ことOpteronである。
2003年(平成15年)1月31日に4月22日発売が予告され、同年4月22日、米ニューヨークで正式に発売された。型番の百の位でマルチプロセッサ対応数を表し、Opteron 100シリーズは1P(単一プロセッサ)用、Opteron 200シリーズは2P用、Opteron 800シリーズは最大8Pの大規模構成に対応した。

64ビット拡張「AMD64」の初採用とItaniumに勝利した理由

Opteron最大の特徴は、既存のx86命令セットに64ビット拡張を施した独自技術「AMD64」(x86-64)を世界で初めて搭載したことである。32ビットのx86命令をそのままネイティブ実行しつつ64ビットモードへ切り替えられる設計により、既存ソフトウェア資産を損なわずに64ビット化への移行が可能になった。

競合のIntel ItaniumIA-64)はx86と非互換の新設計で、32ビットソフトはデコーダを介したエミュレーションで動作させるため大幅な速度低下を招いた。互換性と価格を重視した市場はAMD64を支持し、2004年(平成16年)にはIntel自身も互換技術「EM64T」(後のIntel 64)を採用し、AMD64は事実上の業界標準となった。

ダイレクト・コネクト・アーキテクチャ(DCA)

ダイレクト・コネクト・アーキテクチャの構成図
ダイレクト・コネクト・アーキテクチャの構成図
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Opteronは、メモリコントローラをCPUダイに統合し、CPU同士やI/Oチップとの接続に高速シリアルインターコネクト「HyperTransport」を用いる「ダイレクト・コネクト・アーキテクチャDCA)」を採用した。従来のフロントサイドバスと外付けノースブリッジを介する方式に比べ、メモリアクセスの遅延を大幅に削減した。

1ソケットあたり最大3本のHyperTransportリンクを備え、CPU間や周辺チップとの通信をチップセットを介さず直結できる点が特徴で、後にIntelNehalem世代で採用したQuickPath Interconnectの先駆けとなった設計思想である。

高いマルチプロセッサ・スケーラビリティ(2P/4P/8P)

Opteronのマルチプロセッサ構成図
Opteronのマルチプロセッサ構成図
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DCAによるHyperTransport接続は、NUMA(非対称メモリアクセス)構成での高いスケーラビリティももたらした。各プロセッサが自身のメモリに低遅延でアクセスしつつ他プロセッサのメモリにも透過的にアクセスできる設計により、追加のチップセットなしで2P・4P・8P構成まで直結できた。
当時のIntel Xeonは共有バス方式のため4ソケットを超える構成で性能が伸び悩んだのに対し、OpteronHyperTransportリンクをそのまま増設することで大規模構成に対応でき、サーバー市場で高い評価を得た。

ハードウェア仮想化「AMD-V」のサポート

AMDは開発コード名「Pacifica」として仮想化支援機能を開発し、後に「AMD-V」(AMD Secure Virtual Machine)として製品化した。Opteronでは2006年(平成18年)に投入されたRev F世代(Socket FDDR2対応)以降のモデルがAMD-Vをサポートし、Athlon 64Athlon 64 X2など同世代のデスクトップ向け製品とほぼ同時期に対応した。

AMD-Vは仮想マシンモニタが行っていたCPU・メモリの切り替え処理をハードウェアで肩代わりし、仮想化のオーバーヘッドを大幅に低減した。これによりOpteronはサーバー統合・仮想化基盤の中核を担うCPUとしての地位も強化した。

Athlon MPからの進化

Opteronの直接の先代にあたるのが、2001年(平成13年)6月に投入された32ビットのAthlon MPである。Athlon MPK7アーキテクチャのEV6バスを共有する形で2ソケット構成に対応していたが、バス帯域の共有が制約となり、それ以上のスケーラビリティは望めなかった。

Opteronは64ビット化に加え、バス共有型からHyperTransportによる直結型(DCA)へアーキテクチャを一新し、2Pに留まらず4P・8Pまで対応範囲を拡大した。オンダイメモリコントローラの搭載でメモリ帯域も向上し、Athlon MPが抱えていたスケーラビリティの限界を解消した。

Athlon 64との相違

AMD Athlon 64
AMD Athlon 64
Opteronと同時期にデスクトップ向けとして展開されたAthlon 64は、同じK8コアを共有する姉妹製品である。初期のSocket 940Athlon 64 FXを除き、Athlon 64Socket 754Socket 939向けの非ECC・非レジスタードメモリで動作し、HyperTransportリンクも1本のみでマルチプロセッサに対応しない。
一方OpteronSocket 940を用い、24時間稼働を前提としたECCレジスタードメモリに対応し、HyperTransportリンクを最大3本備えて2P・4P・8P構成を実現する。クロックあたりの性能は同等でも、信頼性検証の水準とマルチプロセッサ対応の有無がOpteronAthlon 64を分けている。

Bulldozer時代の苦戦とOpteronの終焉、Zenへ

2000年代半ば、OpteronIntelの旧世代NetBurstXeonに対しサーバー市場シェアを一時15%前後まで伸ばした。しかしIntelが2008年(平成20年)にNehalem世代でQuickPath Interconnectとオンダイメモリコントローラを導入すると、Opteronの優位性は急速に失われた。

2011年(平成23年)11月投入のBulldozer世代「Opteron 6200」(Interlagos)はコア数を増やしたが1コアあたりの実効性能で伸び悩み、サーバー市場シェアは2007年(平成19年)の約15%から2012年(平成24年)には4.4%まで低下した。2012年(平成24年)のPiledriver世代「Opteron 6300」(Abu Dhabi)でも劣勢は覆らなかった。
AMD EPYC(Zenアーキテクチャ)
AMD EPYC(Zenアーキテクチャ)
AMDは新設計の「Zen」アーキテクチャに開発資源を集中し、2017年(平成29年)6月20日、Opteronブランドに代わるサーバー向けCPU「EPYC」(Naples、7000シリーズ)を発売した。これにより14年間続いたOpteronブランドは幕を閉じ、AMDのサーバー事業はZen世代へ引き継がれた。

主要スペック

項目 仕様
メーカー AMD
発売開始 2003年4月22日
開発コード名 SledgeHammer(K8アーキテクチャ)
製品シリーズ Opteron 100(1P用)/200(2P用)/800(最大8P用)
データバス 外部64ビット(HyperTransport接続)/内部64ビット
アドレスバス 物理40ビット(最大1TB)/仮想48ビット
CPUクロック 1.4〜2.2GHz(初期モデル Opteron 240〜248)
1次キャッシュ 128KB(命令64KB+データ64KB)
2次キャッシュ 1MB
命令セット拡張 AMD64(x86-64)、MMX、3DNow!、SSE、SSE2
プロセスルール 0.13μm SOI
ソケット Socket 940
パッケージ 940-pin micro-PGA
HyperTransportリンク 最大3本(200/800シリーズ)
仮想化支援 AMD-V(Pacifica、Rev F以降で対応)
先代 Athlon MP
後継 AMD EPYC(Zenアーキテクチャ、2017年)

CPUの歴史

発表年 メーカー CPU名 ビット数 最大クロック
1970年Garrett
AiResearch
MP944 (軍用)20bit375KHz
1971年インテル40044bit750KHz
1974年インテル80808bit3.125MHz
1975年モステクノロジーMOS 65028bit3MHz
1976年ザイログZ808bit20MHz
1978年インテル808616bit10MHz
1979年モトローラMC68098bit2MHz
1979年ザイログZ800016bit10MHz
1980年モトローラMC6800016bit20MHz
1983年NECV3016bit16MHz
1984年インテル8028616bit12MHz
1985年インテル8038632bit40MHz
1985年インテルi96032bit100MHz
1985年サン・マイクロシステムズSPARC32bit150MHz
1985年エイコーンARM132bit6MHz
1986年MIPSR200032bit15MHz
1987年ザイログZ28016bit12MHz
1987年モトローラMC6803032bit50MHz
1988年MIPSR300032bit40MHz
1989年インテル8048632bit100MHz
1989年インテルi86032bit50MHz
1990年モトローラMC6804032bit40MHz
1991年MIPSR400064bit200MHz
1992年DECAlpha 2106464bit200MHz
1993年IBM, モトローラ, ApplePowerPC 60132bit120MHz
1993年インテルPentium32bit300MHz
1994年IBM, モトローラ, ApplePowerPC 60332bit300MHz
1995年サイリックスCyrix Cx5x8632bit133MHz
1995年AMDAm5x8632bit160MHz
1995年サン・マイクロシステムズUltraSPARC64bit200MHz
1999年IBM, モトローラPowerPC G432bit1.67GHz
1999年AMDAthlon32bit2.33GHz
2000年インテルPentium 432bit3.8GHz
2001年インテルItanium64bit800MHz
2003年AMDOpteron64bit3.5GHz
2003年インテルPentium M32bit2.26GHz
2006年SCE,ソニー,IBM,東芝Cell64bit3.2GHz
2006年インテルCore Duo32bit2.33GHz
2006年インテルCore 2 Duo64bit3.33GHz
2008年インテルCore i9/i7/i5/i364bit5.8GHz
2017年AMDRyzen64bit5.7GHz
2020年AppleAppleシリコン64bit3.49GHz
2023年インテルCore Ultra 9 / 7 / 564bit5.1GHz

参考書籍

表紙 忘れ去られたCPU黒歴史
著者 大原 雄介
出版社 角川アスキー総合研究所
サイズ 単行本
発売日 2012年07月10日頃
価格 1,540円(税込)
ISBN 9784048867719

参考サイト

(この項おわり)
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